筑波大ら,必須アミノ酸「トレオニン」生合成の最終過程を明らかに

筑波大学数理物質系助教の庄司光男氏と大阪医科大学総合教育講座教授の林秀行氏らによる研究グループは,スーパーコンピュータなどを用いて,ヒトの体内で作り出すことができない必須アミノ酸「トレオニン」生合成の最終過程の反応経路を初めて解き明かした。

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植物や大部分の微生物はトレオニンを多段階の複雑な反応経路で合成しており,その最終過程では,トレオニン合成酵素(ThrS)による酵素反応が行なわれている。この反応には“生成物支援触媒”という特徴があり,生成物の 1 つであるリン酸イオンがトレオニン生成反応を飛躍的に増大させていることが分かっている。しかし,実際にどのような経路で反応しているのかはわかっていなかった。

酵素における反応機構を明らかにするには高精度量子力学計算法を用いるのが有効だが,理論計算による検証には非常に多くの計算と,それを現実的な時間で可能にする計算の高速化が必要とされていた。

研究グループはスーパーコンピュータ「T2K-Tsukuba」を用いて並列計算(256~1024並列)の効率化に取り組んだ結果,高速計算が実行できるようになり,ThrSにおける反応特性決定過程に重要な反応における,すべての反応中間体と反応経路について理論検証を行なうことができた。

今回の成果により,酵素反応の学術的理解が進むのみならず,酵素や精密有機合成における効率的反応進行や主反応・副反応の制御に応用していく上で極めて重要な示唆を与えることができ,新薬開発への発展も期待される。

また,スーパーコンピュータを利用することでリアリステックな計算モデルを用いることができ,実験結果と多くの対応がつけられるようになったことで,短時間でより膨大な探索を行なうことが可能になる。

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