筑波大,トマト成熟過程における細胞壁の再構築機構を解明

筑波大学生命環境科学系講師の岩井宏暁氏らは,トマトでは果実が熟成する過程で果皮の構造がダイナミックに再構成されていることを初めて確認した。これは,トマト果実の組織ごとに,細胞壁の架橋成分であるヘミセルロースを調査することにより明らかとなったもので,果実の成熟過程では分解だけではなく,ヘミセルロース性多糖類の合成をともなう再構築が起きていることが判明し,成熟のメカニズムに関する新たな知見が得られた成果。

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一般に果実は成熟に伴って軟らかくなっていく。これまでは,この成熟過程では果実の細胞がもつ細胞壁の分解のみが起きていると考えられてきた。しかし,果実細胞壁の主成分であるペクチンの分解を抑制するだけでは,軟化を遅らせることは出来ても完全に止めることはできない。そのため,その仕組みは未解明のままだった。

そこで今回の研究では,これまで調査されていたペクチンではなく,細胞壁の架橋性多糖の合成に焦点を当てた。果実まるごとを対象に果実の成熟研究を行なうというこれまでのやり方に替えて,複雑な構造をとる果実組織を細かく分類して調査することで,各組織ごとに異なる成熟に伴う細胞壁の代謝調節を明らかにしようとしたもの。

その結果,果実が成熟する際には,単に細胞壁が分解されて軟化が引き起こされるだけではなく,形状を維持するための堅さと軟らかさ両方を備えた新たな細胞壁が再構築されることが明らかとなった。これにより,果実の成熟のメカニズムがさらに詳しく解明されることが期待される。

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