NIMS,2種類の酸化物ナノシートをサンドイッチ積層して高性能誘電素子を実現

物質・材料研究機構国際ナノアーキテクトニクス研究拠点フェローの佐々木 高義氏,同主任研究者の長田実准氏らの研究グループは,導電性および誘電性の2種類の酸化物ナノシートを積み木細工のようにサンドイッチ構造に堆積することにより,世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した。

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現在コンデンサには,セラミックスナノ粒子からなる誘電体層と電極をサンドイッチ状に交互に多層積層した積層セラミックコンデンサ(MLCC)が利用されており,いわゆるトップダウン手法で小型化と高性能化を実現している。昨今の小型モバイル機器の進歩の中で,MLCCもさらなる小型化,高性能化が求められているが,現行方式では材料,プロセスの両面でほぼ限界に達していた。

そこで研究グループでは,トップダウン手法とは逆転の発想で,独自に開発してきた分子レベルの薄さの2次元ナノ結晶「無機ナノシート」を用いた新たなボトムアップ型素子製造プロセスを開発し,世界最小の高性能コンデンサ素子の作製に成功した。

誘電体層および電極層向けにそれぞれぺロブスカイト型酸化ニオブナノシート(組成:Ca2Nb3O10-)と酸化ルテニウムナノシート(Ru0.95O20.2-)を採用することで,誘電体層および電極層のナノサイズの薄膜化を実現し,さらに室温・溶液プロセスで積み木細工のように積層することで高品位の電極/誘電体/電極(MIM)のサンドイッチ型素子を作製した。

この素子はトータルの厚みが30 nm弱と世界最小ながら,103~106 Hzの広い周波数範囲で安定かつ非常に高い静電容量(27.5 μF cm-2)を示した。今回試作した素子はMLCCのMIM構造1ユニットに相当し,多層化が今後の課題となるが,その性能は市販されている現行のMLCCの約2000倍に相当することに加え,全て簡便,安価,低環境負荷の室温・溶液プロセスで製造できるため今後の多層化工程にも有利であり,将来の応用展開に向けても極めて有望な成果だとしている。

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