東工大,魚が淡水中のわずかな栄養素を取り込む機構を解明

東京工業大学と米メイヨー医科大学 の研究グループは,淡水魚のえらで働くNa+/NH4+ 交換輸送体を初めて特定し,その活性を明らかにすることに成功した

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ナトリウムイオン は体液(血液など細胞外液)の主要な陽イオンであり,ヒトや硬骨魚類の血漿には140~170 mM(ミリモーラー,海水の1/3程度)存在している。淡水魚はナトリウムイオン濃度が 1 mM に満たない淡水で棲息するため,常に体液イオン濃度の低下の危機にさらされている。ところが淡水魚はえらを介して淡水中の塩分を吸収し,イオンバランスを維持することができる。

これについて,淡水からのNa+ 吸収はNH4+ 排出と交換で行なわれるという説が70年前に提唱されたが,その分子実体は特定されておらず,長い間専門家の間で議論されてきた。

2003年に東工大らのグループは,酸性湖である青森県・恐山湖(宇曽利湖)に棲息するウグイの解析から,塩類細胞の頂端膜(apical膜、細胞膜で環境水と接している部分)にナトリウムイオン/水素イオン交換輸送体(NHE3)というタンパク質が局在することを初めて見出した。

今回,ゼブラフィッシュNHE3をアフリカツメガエル卵母細胞に発現させて活性を解析し,NHE3はNa+/NH4+ 交換輸送体としても機能すること明らかにした。この結果は,排泄物の排出(NH4+)と交換に栄養素(Na+)を吸収する優れた省エネシステムとしてNHE3が機能することを意味し,魚類の淡水適応機構や進化のさらなる解明も期待される。

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