理研,超新星が放出した高エネルギーのX線を捉えて鮮明な撮影に成功

理化学研究所は,米国カリフォルニア工科大学などと共同で,地球から1万光年ほど離れている「カシオペア座A」が超新星爆発した時に生成された元素のうち,チタンの放射性同位体「チタン-44」が放出した高エネルギーのX線を捉え,鮮明な天体写真を撮影することに初めて成功した。これにより,超新星爆発が従来説の「球対称」や「軸対称」爆発ではなく,非対称な爆発だったことが分かった。

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研究グループは「カシオペア座A」を,延べ2週間にわたって観測。撮影写真から宇宙放射線による雑音の除去や集光鏡のゆがみによる像の拡がりの修正などの画像処理を行ない,チタン-44の鮮明な天体写真を得ることに初めて成功した。

この天体写真からチタン-44は爆心から非対称的に分布していることが分かり,超新星爆発が非対称的に起こったことが明らかになった。この結果,これまで提唱されてきた超新星爆発モデルのうち「合成された元素が球対称にまき散る」というモデルや,「ある方向にのみ軸対称に吹き飛ぶ」モデルは適切ではないことが分かった。

また,鉄元素はチタンと同じ元素合成プロセスで生成されると考えられているが,すでに見えていた鉄の空間分布と今回分かったチタン-44の空間分布が異なるという結果も得られた。

チタン-44を多く検出した爆心地近くは,大量の鉄も同様に存在しているものの,自由電子の状態に影響して鉄から低エネルギーX線が出ていないからか,もしくは鉄とチタンを引き離す未知の機構が働き,爆心地には鉄があまり存在しないからと考えられる。

高エネルギーX線の強度から推定したチタン-44の爆発時の総質量は,約2.5×1026 kgとなり,地球の全質量の約40倍に及ぶ大量のチタン-44が合成されたことを示している。

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