京大、遺伝子の変異によらないがん化の仕組みを解明

京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)/岐阜大学大学院大学院生の大西紘太郎氏らの研究グループは、生体内で細胞を不十分な形で初期化すると、エピゲノムの状態が変化し、がんの形成を促すことを見出した。

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iPS細胞とがん細胞は無限に増殖する能力を持つという点で、共通の性質を持っている。しかし、がんは遺伝子の変異が積み重なって生じるとされているが、体細胞を初期化してiPS細胞が生まれる際には遺伝子が変異する必要はない。

そこで、マウスの体内で一時的に初期化因子(Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Myc )を働かせ、不十分な初期化を起こしたところ、DNAのメチル化パターン(エピゲノム)が大きく変化し、様々な組織で腫瘍が生じた。腎臓でこのようにして生じた腫瘍は、小児腎臓がんとして一般的な腎芽腫と組織学的・分子生物学的特徴が似ていた。

この腫瘍の細胞を調べたところ、遺伝子の変異は見つからず、エピゲノムの状態が変化し、多能性幹細胞と似たパターンに変わっていることが明らかとなった。また、腫瘍の細胞を初期化したiPS細胞からは正常な腎細胞が作られることを示した。

これらの結果から、エピゲノムの制御が、特定のタイプのがんで、腫瘍形成を促進する可能性が示された。

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