高エネルギー加速器研究機構など,宇宙線ミュオンを用いて原子炉を調査

高エネルギー加速器研究機構,筑波大学,東京大学,首都大学東京に属する研究者らの調査グループは,日本原子力発電の東海第二発電所の原子炉において,原子炉建屋の外部にミュオン検出装置を設置し,原子炉建屋内の格納容器,圧力容器,使用済み燃料プール内に保存されている核燃料の存在を特定し,その概略の形状を特定することに成功した。

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ミュオンは地球の外部から大量に降り注いでいる粒子で,高い物質透過能力があることが知られている。これまでこのミュオンを使って大型構造物の内部を調査するという研究が試みられてきたが,今回の技術を原子炉建屋内部の調査に利用した。

具体的には,ミュオンの計測を標準的な計測装置であるプラスティック・シンチレーションカウンタ・ホドスコープを用いて行なった。原子炉を三方向から観測し,内部の構造を三次元的に再構成し,核燃料の存在とその位置を特定するため,この計測装置を簡易コンテナに組み込み,原子炉建屋の外部60mの地点2箇所と30mの地点1箇所に設置し,2012年2月から2013年12月まで計測を実施した。

その結果,それぞれの観測地点で,原子炉建屋内部のイメージを得ることができた。さらに,3つの地点で観測したデータを用い,位置と大きさの特定された使用済み燃料プールの場所と核燃料,原子炉格納容器の外形形状を18度ごとの異なった視点で再構成した結果,核燃料と考えられる重い物質,使用済み燃料プール,格納容器に対応する可視化にも成功した。

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今回の調査を踏まえて適切な設計・計画を行なうことにより,近づくことが困難な構造物の調査に有効な手段を提供できるものと期待を寄せている。

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