京大など、細胞移植に適した新しいヒトiPS細胞の樹立・維持培養法を確立

京都大学iPS細胞研究所(CiRA)講師の中川誠人氏、同教授の山中伸弥氏らの研究グループは、大阪大学、味の素との共同研究において、細胞移植治療に適した人工多能性幹細胞(iPS細胞)の新しい樹立・維持培養法を確立した。

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ヒトのiPS/ES細胞を再生医療として多くの患者が利用できるようになるためには、ヒト以外の動物由来の物質を含まず、安定して生産するために極力工程数が少ない方法でiPS細胞を樹立・維持培養することが望まれる。しかし、これまでの方法では、iPS/ES細胞を培養するために、培地中には血清などの動物由来の成分が多数含まれており、またフィーダー細胞を使うことで作業工程が多くなっていた。

中川講師らの研究グループは、フィーダー細胞の代わりに、大阪大学蛋白質研究所教授の関口清俊氏らが開発したリコンビナントラミニン-511 E8断片を使い、味の素と開発した動物由来の成分が含まれていない(Xf:xeno-free)培地でヒトiPS/ES細胞を維持培養できることを見出した。この方法を用いると、ヒトのiPS/ES細胞は容易に扱うことができ、染色体に異常なく長期間にわたって安定して継代培養することができる。

ヒトの皮膚や血液の細胞からフィーダー細胞を使わず(Ff:Feeder-free)、動物由来の成分を含まない培地で作製したiPS細胞は、免疫不全マウスに移植すると、テラトーマの形成が観察され、三胚葉に分化する能力を確認できた。また、ここで作製したiPS細胞はドーパミン産生細胞やインスリン産生細胞、血液細胞へと分化させることができた。

これらの結果は、今回開発した新しいfeeder-freeかつxeno-freeの培養システムで、ヒトiPS細胞を樹立・維持培養することが可能であることを示している。この方法は、ヒトへの細胞移植に最も適したグレードのiPS細胞をつくるためだけではなく、創薬や毒性試験・疾患モデルなどの領域でも有効利用されることが期待される。

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