筑波大、ベンゼン環を開裂させる反応を世界で初めて発見

筑波大学は、ベンゼンとシクロブタジエンが反応し、ベンゼン環(C6H6)が形式的にC4H4とC2H2の2つのフラグメントに開裂する反応を世界で初めて発見した。

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ベンゼンは代表的な芳香族分子の一つで、炭素原子6個が環状に結合した安定な構造であるため、多くの有機化合物の基本骨格となっている。ベンゼンの反応は、一般にベンゼン環の水素原子を他の原子や置換基に置き換える置換反応であり、ベンゼン環構造そのものを壊す反応は、穏やかな条件下では進行しない。

ベンゼン環を壊すためには、芳香族性のもとになっている安定化の大きなエネルギーを越えることが必要と考えられる。一方、シクロブタジエン(C4H4)は、炭素原子4個からなる環状構造をもつ分子だが、非常に不安定で反応性が高いという性質を有している。

この研究では、シクロブタジエンの極めて高い反応性を利用して、ベンゼンの環構造を活性化し、その炭素骨格を壊すことに成功した。まず、不安定な構造のシクロブタジエンを単離することを試みた。シクロブタジエンにケイ素置換基と強い電子求引基を導入したところ、ケイ素基の立体電子的効果によって安定化し、単離が可能となった。

シクロブタジエンは、その環構造そのものに非常に高いエネルギーを有しており、反応性に富んでいる。これを、安定な構造であるベンゼンと反応させると、常圧・120°Cという温和な条件下でDiels-Alder反応が進行し、ベンゼン環がC4H4とC2H2のフラグメントに開裂した化合物が得られた。

これまで、ベンゼン環の開裂には高温高圧の過酷な条件が必要だとされていたが、この研究結果は、定説を覆すものとなった。

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