産総研など、磁気抵抗膜を用いたマイクロ波発振器の高性能化に成功

産業技術総合研究所ナノスピントロニクス研究センター研究センター長の湯浅新治氏らは、キヤノンアネルバ、大阪大学と共同で、高出力と高い振動安定性(高Q値)をあわせもつナノコンタクト型のスピントルク発振素子を開発した。

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スピントルク発振素子は磁気抵抗膜を用いた電子デバイスで、磁気抵抗膜を構成する強磁性体層中の磁石(スピン)の運動(歳差運動)を電気信号に変換して外部へ出力できる。

今回、磁気抵抗膜として磁気トンネル接合膜を用い、その局所領域(約100 nm以下)に電流を注入するナノコンタクト型のスピントルク発振素子を使用した。スピンの向きを磁気トンネル接合膜の膜面に垂直な方向に傾けることで、これまで困難であった歳差運動の安定化を実現し、3000以上の高いQ値を得た。このQ値は、従来の磁気トンネル接合膜を用いたスピントルク発振素子に比べて10倍近く大きな値である。

この成果は、スピントルク発振素子の実用化を加速し、LSI中に組み込むことが可能なナノスケール発振器や超高感度・高分解能磁界センサー、次世代ワイヤレス通信用マイクロ波発振器などへの応用が期待される。

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