NIMS、ガラス基板上で配向を自在に制御したペロブスカイト酸化物結晶薄膜の成長に成功

物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究グループは、ガラス等の任意の基板の上に、重要な機能性材料であるペロブスカイト型酸化物の高品質薄膜を望みの方向に向けて配向成長させることを可能とする新技術を開発した。

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研究グループは層状化合物を層1枚にまでバラバラに剥離して得られるグラフェン類似物質である無機ナノシートのライブラリの中から、成長させたい方位の構造に適合した3種類の酸化物ナノシートを選択して、溶液プロセスを用いてガラス等の基板表面に隙間、重なりが無いように配列させ、厚さ約1ナノメートルの極限的に薄い下地(シード)層を形成した。その上にペロブスカイト型酸化物結晶薄膜を気相プロセスにより堆積させた結果、それぞれのナノシートの持つ2次元格子との構造整合に対応して、ペロブスカイト結晶の主要な利用面方位である(100),(110),(111)方向に配向制御して成長させることに成功した。この際、通常の単結晶基板表面と異なり、ナノシートでは未終端の結合がないため、より自由度のある薄膜成長が可能となる優位性を有することも明らかとなった。得られた薄膜は無配向の薄膜と比べて2倍以上の誘電性能を示し、本技術の有効性が機能面からも実証された。

今回の研究成果はいわば「模様を持ったナノレベルの薄さの壁紙」ともいえるナノシートで基板表面を被覆することで、重要な機能性材料であるペロブスカイト型酸化物薄膜を様々な方向に配向成長制御することを可能としたものであり、これまで不可能であったガラスやプラスチックといった汎用基板を利用できること、ナノシートの基板表面の被覆は室温溶液プロセスで行うことができることから、安価で普遍性の高い新技術といえ、MEMS、センサなどへの応用技術に大きな波及効果、技術革新をもたらす可能性がある。

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