理研、重いマグネシウム同位体の原子核は全て大きく変形していることを発見

理化学研究所は、陽子数に対して中性子数が非常に多いマグネシウム同位体(38Mg:陽子数12、中性子数26)を生成、2つの励起準位を観測し、その比の値から38Mgの原子核が、魔法数を持つ原子核の特徴である球形ではなく、大きく回転楕円体に変形していることを見いだした。これにより、魔法数とされていた中性子数28が魔法数でないことを発見した。また、この大きな変形状態が中性子数22、24の時にも起きていることが分かった。

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原子の中心に存在する原子核は陽子と中性子で構成され、原子核はこれらの組み合わせによりさまざまな特徴を示す。陽子や中性子がある特定の数「魔法数」の時、原子核は球形になり、硬くなることが知られている。自然界に存在する原子核では、2・8・20・28・50・82・126が魔法数で、物質の成り立ちを説明する物理学上の基本的な法則として、約半世紀にわたって普遍的な定数と考えられていた。しかし近年、理研をはじめとする放射性同位元素(RI)ビームを用いた研究により、「魔法数は不変」という定説を覆すデータが次々と得られている。

38Mg の2つの励起準位を観測した結果、2つの励起準位のエネルギー値の比は3.07だった。このことから、38Mgの原子核は球形ではなく大きく回転楕円体に変形すると分かり、38Mgと中性子数の近い40Mg(中性子数28)も魔法数を持たない原子核、つまり魔法数28が消滅していることを見いだした。同時に、中性子数22、24の時も、ほぼ同じ大きさで変形していることも分かった。

核図表でMgの中性子数20の領域は「異常変形の島」と呼ばれていた。今回の発見とこれまでのRIBFで得られたデータから、中性子数20から28におけるネオン(Ne:陽子数10)からSiにかけて変形領域は「島」ではなく、「大陸」のように広がっていることが判明した。

今回の成果により、この特別な領域にひそむ新しい量子現象の研究が進展すると期待される。

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