原研ほか、紫外線が金属を透過することを確証

日本原子力研究開発機構敦賀本部レーザー共同研究所所長の大道博行氏ら、大阪大学大学院工学研究科教授の福田武司氏、宮崎大学工学部教授の窪寺昌一氏らの共同研究グループは、金属の一種であるナトリウム中を紫外線が透過することを、世界で初めて明らかにした。

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一般に金属は紫外線を吸収するため、紫外線が金属を透過するとは考えられていなかった。実際、様々な金属に対する紫外線の透過率が調べられているが、数ミリ厚の金属を紫外線が透過する報告はない。

一方、まだ十分に紫外線透過率が調べられていない金属もあり、そのひとつがナトリウム。ナトリウムの透過特性の研究は1930年代に遡るが、正確な実験データの取得ができなかった。ナトリウムは空気中のごく僅かな水分と反応して性質が変わり、透過率が損なわれるため、正確な透過率を測定するための試料の作成が極めて難しい点が理由の一つと考えられる。

今回、共同研究グループは、水分をほぼ完全に除去したナトリウム専用の実験施設を用い、フッ化マグネシウムという紫外線を通す特殊な窓材の間にナトリウムを挟み込むことで安定な試料の作製に成功し、その結果、真空紫外線と呼ばれる波長115-170ナノメートルの光が、厚さ1~8ミリメートルの固体金属ナトリウムや温度150℃の液体金属ナトリウムを透過することを世界で初めて明らかにした。さらに厚さ8ミリメートルのナトリウムの陰に隠れた物体の透視を行ない、その像を明瞭に撮影することにも成功した。

今回の研究結果は、従来の理論では考えられない高い紫外線透過率を示しており、基礎科学の観点から、金属の光学的性質に新たな理論的課題を提供するものと期待される。また、技術的観点からは、光を一切通さないと考えられてきたナトリウムの中で起こる種々の現象が、紫外線により観測できる可能性を示したといえる。ナトリウムを使用する産業利用施設等における保守管理に必要なモニター装置開発につながる技術といえる。

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