理研など、有機薄膜太陽電池の界面構造制御により 電圧向上と電流維持の両立に成功

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、理化学研究所チームリーダーの伹馬敬介氏、東京大学教授の橋本和仁氏らは、有機薄膜太陽電池内の界面構造を制御することで太陽電池の電流と電圧のトレードオフの関係を回避し、電流の低下を抑制して電圧を向上することに成功した。

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伹馬氏らは、これを解決するためには、2つの有機半導体の界面における電荷の再結合による損失を抑えつつ、同時に光エネルギーを界面に集めて電流に変換する「電荷移動中心」を導入することが鍵ではないかと考えた。そこで、2011年に開発した「二層型有機薄膜太陽電池」の構造を土台に、有機半導体の界面に薄い絶縁性のポリマー薄膜を挿入し、さらに絶縁層に少量の有機色素を添加(ドーピング)した。その結果、期待通りに太陽電池の電圧が向上し、さらに有機半導体から色素への励起エネルギーの移動によって、電流の低下を抑制できることを見いだした。

同様の構造を高効率の有機薄膜太陽電池に適用することにより、原理的にはどの電池でも電流の低下を抑制しつつ、電圧を0.1V(ボルト)ほど上昇させ、変換効率も1.1~1.2倍程度押し上げることが見込まれる。今後、適用にあたっての実証実験を経て、将来的には既存の有機薄膜太陽電池の限界効率を打ち破ることが期待される。

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