京大、ヒトの皮膚細胞から軟骨様細胞へ直接変換に成功

京都大学教授の妻木範行氏の研究グループは、ヒトの皮膚線維芽細胞からiPS細胞を経ずに軟骨細胞様細胞(induced chondrogenic cell:iChon cell)へと直接変換すること(ダイレクト・リプログラミング)に成功した。

関節軟骨は骨の端を覆い、滑らかな関節運動を行うにあたって重要な役割を果たしているが、軟骨は修復能力が乏しく、損傷を放置すると広い範囲で線維化などの変性が生じ、関節機能への障害や痛みを引き起こす。

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これまでに妻木氏らのグループではマウス皮膚線維芽細胞に2つのリプログラミング因子(c-MYC、KLF4)と1つの軟骨因子(SOX9)を導入することで、iPS細胞の状態を経ることなく、軟骨細胞様細胞へとダイレクト・リプログラミングできることを報告している。

今回は、ヒト皮膚線維芽細胞を用いて同じ3つの因子(c-MYC、KLF4、SOX9)を導入することにより、軟骨細胞様細胞(iChon cell)を直接誘導できることを明らかにした。iChon細胞は軟骨細胞の遺伝子パターンを示しており、線維芽細胞特有の遺伝子パターンは消去されていた。また、iChon細胞を免疫不全マウスに移植すると、軟骨組織を作り、奇形腫などの腫瘍はできなかった。

この研究により、ヒトの細胞においても線維芽細胞を軟骨細胞へと直接変換しうることが示された。変換の際に腫瘍形成に大きな影響を与えるとされるc-MYCの遺伝子を導入していることなどから、ヒトでの治療に応用するためにはさらなる改善が必要だが、細胞を直接変換する方法は軟骨再生において軟骨細胞を供給する手段の1つとなることが期待できるという。

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