阪大、「進化の機能」を持った人工細胞の作成に成功

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、大阪大学大学院情報科学研究科教授の四方哲也氏の研究チームは、生物の特徴である「進化する能力」を持つ人工細胞を作り出すことに世界で初めて成功した。

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RNAからなる人工ゲノムと数十種類のたんぱく質などを細胞サイズの油中水滴に封入した人工細胞を作成した。この人工細胞内では、ゲノムRNAから遺伝情報が翻訳され複製酵素が合成される。そして、合成された複製酵素により元のゲノムRNAの複製が起こる。さらに、この人工細胞を、栄養(たんぱく質合成に必要な酵素・アミノ酸など)を含んだ油中水滴と人為的に融合・分裂をさせることにより、天然の細胞と同じように際限なくゲノムの複製を続けることに成功した。

また、この人工細胞を長期に培養した結果、複製エラーによりゲノムRNAに突然変異が蓄積し、より複製しやすいゲノムRNAが自然選択により進化することを見いだした。これはダーウィンが提唱した進化のメカニズムを持った人工細胞が誕生したことを意味している。

生物の進化はいまだに多くの謎に包まれており、その一因は、進化の直接観察が難しいことにある。本研究で作成した人工細胞は、その進化を試験管内で再現し直接観察することができるため進化過程の詳細な理解に役に立つと期待される。また、この人工細胞を基盤としてさらに多くの能力を進化させていくことにより、天然の生物に頼らないより効率的な食糧や薬剤の生産に貢献できると期待される。

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