京大、ダウン症候群に合併した急性巨核芽球性白血病の新規原因遺伝子を発見

京都大学医学研究科教授の小川誠司氏、弘前大学医学系研究科小児科学教授の伊藤悦朗氏、名古屋大学医学研究科小児科学教授の小島勢二氏、群馬県立小児医療センター院長の林泰秀氏、東京大学医科学研究所教授の宮野悟氏らを中心とする国際共同研究チームは、次世代遺伝子解析装置を用い、ダウン症候群に合併する一過性異常骨髄増殖症(TAM)および急性巨核芽球性白血病(DS-AMKL)の網羅的遺伝子解析を行ない、本症にみられる遺伝子異常の全体像を解明した。概要は以下の通り。

131002kyoto5

  • TAMの全エクソンシーケンスを行った結果、TAMではGATA1以外の遺伝子変異はきわめて稀であり、TAMは21番染色体の過剰(トリソミー)とGATA1遺伝子の変異によって起こっていると考えられた。
  • DS-AMKLの全エクソンシーケンスにより、TAMからDS-AMKLへの進展に関与するコヒーシン複合体やCTCFEZH2、およびRAS/TKなどのシグナル伝達系分子をコードする遺伝子群の変異を発見した。
  • 特に、コヒーシン複合体を構成する五つの遺伝子の変異と機能的に関連のあるCTCFの遺伝子変異はDS-AMKLの65%の症例に変異が認められ、DS-AMKL発症に関わる重要な遺伝子変異と考えられた。

今回の成果によって、TAMおよびDS-AMKLの発症メカニズムの解明が大きく前進した。新規の遺伝子異常が判明したことで、これらの遺伝子を標的にした新たな治療法の開発が期待できる。また、さらに多くのDS-AMKLの解析をすることにより、再発する可能性の高いハイリスクの患者を予測できるようになることが期待される。さらに、この研究成果は、ダウン症に限らず、すべての白血病の発症機構の解明と治療法の開発に役立つことが期待される。

詳しくはこちら