国立天文台、仮想巨大電波望遠鏡によりソンブレロ銀河の中心に潜む超巨大ブラックホールの周辺構造の観察に成功

国立天文台水沢VLBI観測所の秦和弘研究員が率いる研究チームは、地球から最近傍にある銀河の1つとして有名な「ソンブレロ銀河」の中心に潜む超巨大ブラックホールの周辺構造を、位相補償VLBI手法を駆使することで、すばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上細かい解像度で検出・撮影することに世界で初めて成功した。

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VLBI(Very Long Baseline Interferometry:超長基線電波干渉計)とは、地球各地に存在する複数の電波望遠鏡を繋ぎ、地球サイズ規模の実効口径を持つ巨大電波望遠鏡を実現する技術。これによりすばる望遠鏡やハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上という、あらゆる観測装置のなかで圧倒的な解像度を実現することができる。

更に、ここに位相補償という技術を組み合わせた。位相補償とは日本の国立天文台が世界をリードしている観測手法であり、目標天体と隣接する参照天体をほぼ同時に観測することで、地球大気によるゆらぎを除去する技術。これにより、暗い天体からやってくる微弱な電波でも大気による擾乱に埋もれること無く鮮明に検出することが可能になる。

今回撮影に成功したのは、ブラックホールによる重力が強く光さえ脱出できなくなる半径(シュバルツシルト半径)の僅か数十倍程度の領域に迫るかつてない解像度であり、更にブラックホール近傍から南北2方向に向かってガスが「噴出する」様子を初めて鮮明に捉えることに成功した。

この成果は、ブラックホールからガスが噴出する仕組みを解明するための重要な手がかりとなるとともに、現代科学の究極の目標の1つである「ブラックホールの直接撮像」実現への機運が一段と高まることが期待される。

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