北陸先端大、光と熱で形状記憶するバイオフィルムを世界で初めて開発

科学技術振興機構(JST)が実施する課題達成型基礎研究の一環として、北陸先端科学技術大学院大学・マテリアルサイエンス研究科准教授の金子達雄氏と王 思乾氏らは、植物細胞に含まれる桂皮酸類(ポリフェノールの一種)を用いて、光と熱で多重形状記憶するバイオフィルムを開発した。

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今回、光合成微生物から高等植物まであらゆる植物細胞に含まれる桂皮酸類の光機能性(リモート性、強度・波長などの制御性、環境調和性)に注目し、これと脂肪酸を組み合わせることで成形加工可能かつゴム物性を持ち合わせる高分子を世界で初めて作成した。

この高分子をフィルム化し、水銀ランプを照射するとランプの方向に凹面を向けて屈曲する光メカニカル現象が見られた。また、光の照射強度、方向を変化させることで従来の光メカニクス素材よりも複雑に形状制御することも可能だった。同時に、このフィルムは熱による形状記憶効果を示すことも分かった。

そこで光メカニクス効果と形状記憶を組み合わせることで、1)光により記憶した形状から温度変化による形状記憶効果で別の形状へと変化させ、2)再び加熱することで光により記憶した形状へと戻し、3)さらにより短波長の紫外線を照射することで光変形前の初期形状に戻すことができた。以上のように、生体分子から光と熱で多重形状記憶できる高機能性フィルムを作成することに世界で初めて成功した。

将来的には、光アクチュエータ、光学-力学エネルギー変換素子などへと、さまざまな応用展開が期待でき、バイオプラスチックとしての大気中CO2削減効果も期待できる。

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