京大、iPS細胞技術を用い先天性無巨核球性血小板減少症の病態を再現

京都大学 iPS細胞研究所(CiRA)研究員の平田真治氏、教授の江藤浩之氏らの研究グループは、1名の先天性無巨核球性血小板減少症(CAMT)の患者の方からiPS細胞を作製し、生体外で血液の細胞へと分化させ、健常者との違いを詳細に解析した。

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CAMTは、トロンボポイエチン受容体が介する細胞内シグナルが先天的に失われることにより、引き起こされる。出生時から深刻な低血小板状態に陥り、幼少期に骨髄の機能不全を起こして、赤血球、白血球の順番で血球細胞が徐々に減少してしまう。生存するためには、骨髄移植による治療が必要となる重篤な病気。これまで適切な実験モデルがないことが病態解明の障害となっていた。

今回、CAMT患者のiPS細胞を作製し、生体外にて血液の細胞へ分化させた結果、白血球に比べて巨核球や赤血球が著しくできなくなるというCAMTの病態を再現することに成功し、ヒトの場合、トロンボポイエチン受容体が、多能性造血前駆細胞の維持や血小板の産生に加え、赤血球の産生にも必須であることがわかった。

この成果は、これまで、血小板数の増加に用いられていたトロンボポイエチン様の薬剤が貧血改善にも役立つ可能性があることを示唆するほか、この疾患のiPS細胞は今後、ヒトの血液産生の起源や血液産生経路を研究するための重要な道具ともなる。

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