京大、ほ乳類の胎盤の多様性に古代ウイルスが関与することを発見

京都大学ウイルス研究所准教授の宮沢孝幸氏、ウイルス研究所産学官連携研究員(現在は日本学術振興会特別研究員SPD)の仲屋友喜氏、岩手大学教授の橋爪一善氏、岩手大学博士研究員(現在は東京都健康長寿医療センター研究所博士研究員)の越勝男氏、日本学術振興会特別研究員PD(現在は東海大学助教)の中川草氏らの研究グループは、ウシやヒツジ、ヤギなどが属するウシ科動物の胎盤構造の多様性に、太古に感染したレトロウイルスである内在性レトロウイルスが関わっていることを、世界で初めて突き止めた。

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ヒトを含む真獣類(胎盤をもつほ乳類)は、発生時に胎児を育む胎盤をつくる。真獣類は、恐竜絶滅後に進化を遂げ多様化したが、体内の組織や器官の構造は基本的に類似している。ところが胎盤の形態や構造は、動物ごとに大きく異なる。この胎盤の形態の違いが何によるものなのかは謎に包まれている。ウシ科動物は、ウシ亜科やヤギ亜科、インパラ亜科など全7亜科から構成されるが、すべて約100個の小さい胎盤節から構成される多胎盤を形成する。その形成過程において、胎子側の細胞と母体側の細胞が融合する現象がみられるが、その細胞融合像が各亜科により異なっている。

研究グループは、ウシ内在性レトロウイルスK1(BERV-K1)のエンベロープタンパク質が、ウシ亜科動物において細胞融合の機能を担っていることを確認し、このタンパク質をFematrin-1と命名した。BERV-K1は、ウシ亜科動物の祖先が出現した約2000万年前に、ウシ亜科動物のみに感染し、胎盤形成に関わるようになった。ウシ亜科動物はレトロウイルスであるBERV-K1をゲノムに取り込み、胎盤で新たな機能をもたせることで、ウシ亜科に特異的な胎盤構造を獲得したと考えられる。

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