東大ほか、太陽磁場構造をさぐる新手法を開発

東京大学宇宙線研究所を中心とする国際研究グループ(チベットASγ実験)は、地球に届く銀河宇宙線が太陽によって遮られる現象、「太陽の影」を1996年から2009年まで観測して解析し、その大きさが11年の太陽活動周期と相関して変化していることを発見した。

また、「太陽の影」の変化を利用して、太陽近傍の磁場構造を予測する2つの理論モデルを検証した結果、太陽近傍の電流が磁場構造に与える影響を考慮したCSSSモデルが「太陽の影」の実験結果をよく再現することが分かった。これは、銀河宇宙線中にできる「太陽の影」を用いて太陽近傍の磁場構造の検証を行った世界で初めての成果である。

太陽表面から地球の間の磁場は直接観測が難しく、様々な理論モデルよって推定されているのが現状。惑星間空間の磁場の観測としては、宇宙探査機であるユリシーズやボイジャーなどにより、太陽から離れた場所の観測があるものの、特に太陽近傍は高温・高放射線の過酷な環境であるために最新の宇宙探査機であっても近づくことができず情報が不足している。

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今回の成果は、太陽磁場構造をさぐるための新しい手法を提供するものであり、今後、観測精度をあげることで、より詳細に太陽の磁場構造を診断できるようになると期待される。

なお、本研究は、14年間にわたる宇宙線データの蓄積と、電荷を持つ宇宙線が磁場中で曲げられることを利用したもので、長期間の宇宙線の連続観測により可能となった。

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