東大、マウスで筋強直における異常な分子機構を改善する化合物を発見

東京大学大学院総合文化研究科の石浦章一教授らの研究グループは、筋強直性ジストロフィー1型のモデルマウスで筋強直の原因となる遺伝子のスプライシングを改善する低分子化合物を発見した。現在までに、筋強直性ジストロフィー1型における筋強直は、塩素チャネル遺伝子CLCN1のスプライシングの異常により生じることが分かっているが、その異常の改善方法は見つかっていなかった。

研究グループは、マウス塩素チャネル遺伝子にルシフェラーゼ遺伝子をつないだミニ遺伝子を作製し、正常なスプライシングが細胞内で行われたことをルシフェラーゼ発光で検知するスクリーニングシステムを開発した。このスクリーニングシステムを用いて約400種類ほどの低分子化合物ライブラリーから、manumycin Aという低分子化合物がマウスの塩素チャネル遺伝子の正常型スプライシングを促進することを発見した。

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さらに、manumycin Aを筋強直性ジストロフィー1型モデルマウスの前脛骨筋に筋肉内投与して、病態モデルマウスでの塩素チャネル遺伝子のスプライシング異常の改善に成功した。さらに、manumycin Aの作用機序について調べたところ、manumycin Aの阻害標的であるH-Rasとよばれるタンパク質の発現を抑制する効果があり、その結果、マウス塩素チャネル遺伝子のスプライシングが改善されることが分かった。

今後は、iPS細胞などを用いてmanumycin Aのヒトの塩素チャネル遺伝子に対する効果を確認することで、筋強直性ジストロフィー1型の筋強直症状を緩和する薬剤の開発へと繋がることが期待される。

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