理研、超流動ヘリウム3で「カイラル対称性の破れ」の直接観測に成功

理化学研究所は、超流動ヘリウム3-A相(液体ヘリウム3を0.001K付近の温度まで冷却した時に実現される流動性が高い量子的状態。A相、B相、A1相の3つの状態が実現することが知られている)において、2つのヘリウム原子の対「クーパー対」が右回りまたは左回りのどちらかの回転運動を選ぶ、という「カイラル対称性の破れ」を直接観測することに成功した。

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研究チームは超流動ヘリウム3-A相中に外部から打ち込んだ電子が、クーパー対の右回りか左回りかの軌道回転に応じて、進行方向に対して左または右に力を受けることを発見。これは固有マグナス力と呼ばれる力である。この力の向きから軌道運動の向きを直接決定し、さらに、液体ヘリウム3が超流動ヘリウム3-A相に転移する際に、右回りまたは左回りのどちらかの軌道運動が選ばれることを示した。この観測は、カイラル対称性の破れを実証している。

対称性の破れは、非常に一般的な物性物理学と素粒子物理学を包含する基礎概念。今回のカイラル対称性の破れの観測は、対称性の破れの明快な観測例となると同時に、対称性の破れの結果として生じる位相欠陥などの詳細な理解につながる。

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