京大、東北地方太平洋沖地震に伴う火山の沈降を検出

京都大学防災研究所助教の高田陽一郎氏と福島洋氏の研究グループは共同研究で、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(Mw 9.0)が引き起こした広域地殻変動により、東北地方の複数の火山地域(秋田駒ヶ岳・栗駒・蔵王・吾妻・那須)が局所的に5~15cm程度沈降したことを発見した。これらの局所的沈降の原因は、地下浅部に広く分布する高温領域に変形が集中した結果と考えられる。

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地殻変動を調べるために、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2006年に打ち上げ、2011年5月まで運用された陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)に搭載された合成開口レーダーPALSARが地震前後に取得した画像を用いて、合成開口レーダー干渉法(InSAR)と呼ばれる解析を行なった。

InSAR解析の結果から東北地震の断層すべりによる地殻変動成分を除去したところ、火山地域が地震に伴い沈降していたことを発見した。この沈降域は、熱流量が大きい領域・泉温が高い領域、およびカルデラの分布と良く一致している。また、カルデラの周囲には高温の深成岩が存在することが分かっており、そのような高温の深成岩の中心には、マグマだまりが存在すると考えられる。

一般に温度が高くなると岩石は変形しやすくなることから、沈降した火山地域の下には強度が低い高温岩体が広く分布しており、東北地震に伴う東西引張の力の変化を受けて変形し、地表を沈降させたと考えられる。

今回の発見で、火山は噴火や群発地震を起こさなくても巨大地震による影響を受けていることが明らかになった。また、カルデラなど地熱活動を活発化させる要素が沈降と深く関係することも明らかになった。日本とチリで極めて類似した現象が見られたことから、巨大地震が火山地帯に沈降を引き起こすことは普遍的である可能性が高い。今回見つかった現象は、今後広く火山における巨大地震の影響を理解していく上でのマイルストーンとなるもの。

 

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