分子研、氷の融解が始まる“きっかけ”を分子レベルで解明することに成功

総合研究大学院大学の望月建爾氏(物理科学研究科機能分子科学専攻5年一貫制博士課程4年)は、岡山大学の松本正和准教授および分子科学研究所の大峯巌教授とともに、均一融解の初期過程を分子レベルで詳細に解明する事に世界で初めて成功した。

130621bunsiken1jpg

氷の構造が乱れる最初のきっかけから、それが成長して最終的に大規模な構造の崩壊に至る過程を詳細に追跡した。その結果、氷の融解過程が、これまで考えられていた、微小な液滴の形成→液滴の成長→大規模な融解という単純な経路ではなく、ある種の格子欠陥対の形成と分離といった紆余曲折を経た複雑な過程を経ないと、融解できない事を明らかにした。

水分子同士の水素結合のエネルギーは非常に強いため、温度による構造の揺らぎに誘発されていくつかの欠陥が出来ても、ほとんどの場合すぐに安定な氷構造へ戻ってしまう。しかし、一旦格子欠陥対が分離すると、それらの欠陥対を消して、再び完全な氷構造へ戻すのは困難であり、糸がからまりなかなか元に戻せないような現象、“水素結合ネットワークのからまり”が生じる。この欠陥対は“消えない欠陥”として結晶中に存在し続け、さらに、水素結合ネットワークの組み替えを活性化する役割も果たす事で、氷の強固な水素結合ネットワーク構造を崩壊に導く“きっかけ”になる事を見つけた。

詳しくはこちら