分子研,おわんの形をした分子の内側と外側が生み出す違いを解明

自然科学研究機構分子科学研究所助教の東林修平氏,准教授の櫻井英博氏らの研究グループは,炭化水素化合物で,おわん型の分子構造を持つ「バッキーボウル」に“手”(置換基)をつけた分子を作り出し,従来外側にしか向かないと考えられていた“手”の方向がおわんの内側を向くことがあることを発見,さらに内側に向く理由をスーパーコンピュータを用いて解明した。

バッキーボウル,球型のフラーレン,チューブ型のカーボンナノチューブなどは曲がった形を持っており,曲がった形の内側と外側の違いが現れる現象に科学的興味が持たれている。一方,”手”を付けたおわん分子では,従来”手”がおわん外側に向いた分子しか知られておらず,内側に向く理由がないことから”手”が内側に向いた分子は存在しないと考えられていた。

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研究グループは,遷移金属触媒を用いた方法などによって様々な種類の”手”をおわんに付けて,その”手”がおわん内側,外側のどちらを向いているかを調べた結果,”手”の種類によって内側に向くものがあることを発見した。さらに,内側を向く理由をスーパーコンピュータを用いた計算シミュレーションによって解析した結果,湾曲したおわんの内側と外側の性質の違いが”手”に伝わって,向きが決まることを明らかにした。

今回の成果はおわん分子だけでなく,フラーレンやカーボンナノチューブなど湾曲した形に共通する内側と外側の違いから生み出される普遍的な性質を明らかにしたもの。さらにおわんと”手”の向きを光などで変化させることができれば,分子サイズの機械に応用されることが期待される。

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