東大、「獲得免疫システム」の起源に新たな知見

東京大学大学院理学系研究科生物化学専攻所属大学院生の高場啓之氏、助教の西住裕文氏、名誉教授の坂野仁氏らは、無顎類のヌタウナギにおいて自己に反応する抗体を排除する負の選択機構が存在することを示すとともに、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に相当する候補分子としてアロ白血球抗原(allogenic leukocyte antigen; ALA)を同定した。

脊椎動物ではあらゆる抗原に対して特異的に反応するリンパ球が予め用意されるが、自己に反応するリンパ球は排除されて正常な細胞へは反応しなくなる一方、外から病原体などが侵入した時には、特異的に反応するリンパ球のみが増殖して抗体を産生するという考え方である「クローン選択説」が広く受け入れられている。

軟骨魚類(サメなど)からヒトまでを含む有顎類において、外来抗原の認識およびリンパ球の活性化制御に、MHC分子が中心的な役割を果たし、自己に反応するリンパ球の排除にも関与することが知られている一方、脊椎動物の中で最も起源の古い無顎類は進化の過程で他の脊椎動物とは異なる独自の獲得免疫システムを発達させており、有顎類と同様な制御機構があるのかどうかは全く不明であった。

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これらの研究成果は、獲得免疫の理解やMHC分子の進化的な起源に迫るのみでなく、クローン選択説の自己免疫寛容のメカニズムを再考する上で重要な知見であり、将来的には組織移植時の拒絶反応や自己免疫疾患の理解にも繋がることが期待される。

 

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