浜松医大など、生きた状態での生物の高解像度電子顕微鏡観察に成功

科学技術振興機構(JST)課題達成型基礎研究の一環として、浜松医科大学教授の針山孝彦氏は、東北大学原子分子材料科学高等研究機構教授の下村政嗣氏らと共同で、高真空下でも生命を保護できる生体適合性プラズマ重合膜を発明し、生きたままの状態で生物の高解像度な電子顕微鏡観察に成功した。

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生物の体表は、多様な環境に対応するために細胞外物質(ECS)で覆われている。しかし、電子顕微鏡観察で行われる高真空下のような極限状態では、細胞外物質は内部の物質の放出を抑制することができず、体積が収縮し表面微細構造は大きく変形してしまう。そこで、できるだけ生きた状態に近い微細構造を観察するため、これまでは化学固定や試料の乾燥、金属蒸着などの表面ハードコーティング処理を行ない、死んだ試料を観察していた。

本研究グループは、ショウジョウバエやハチの幼虫など一部の生物がもつ細胞外物質に電子線またはプラズマを照射することで、高真空下でも生物内部に含まれる気体や液体が奪われることを防ぐナノ重合膜(ナノスーツ)が形成されることを明らかにした。さらに、その細胞外物質に類似した化学物質を塗布してナノスーツを形成させると、生きたままで高分解能な電子顕微鏡観察が可能になった。

今後は、これまで観察していた死んだ生物の微細構造ではなく、さまざまな生物を生きた状態で本来の微細構造や運動を直接観察できるようになり、生物のもつ未知の生命現象や行動の解明が期待される。

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