千葉大・東工大、植物が葉緑体に「時」の情報を伝えるメカニズムの発見

千葉大学大学院園芸学研究科特任准教授の華岡光正氏と東京工業大学資源化学研究所教授の田中寛氏の研究グループは、英国ブリストル大学の Dr. Antony Dodd らとの国際共同研究により、植物細胞内で形成される体内時計の情報を光合成器官である葉緑体に伝達するメカニズムを世界で初めて発見した。地球上の農業生産の増大にも期待される本研究成果は、 3 月 15 日に米国科学雑誌「Science」に掲載された。

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モデル植物のシロイヌナズナを用いて、複数のシグマ因子の発現が細胞の概日時計によってコントロールされることを発見。特に、シグマ因子の1 つである SIG5 の欠損株では、光合成の反応中心タンパク質を構成する psbD 遺伝子の周期的な発現が失われることが示され、時間情報がシグマ因子を介して核から葉緑体に伝えられることが実証された。このシステムによって、昼夜の光環境変化に応じた葉緑体タンパク質の生産や光合成活性の最適化が実現していると考えられる。

この発見は、概日時計を中心とした細胞応答メカニズムの新しい概念を提案する上で大きなブレークスルーとなると考えられる。本研究により、植物細胞内の異なるコンパートメント間で時間情報が確かに伝達することが証明された。概日時計の機能は葉緑体の光合成活性や作物の収量に大きな影響を与えることから、地球の食料生産力の向上など、農業分野における応用も強く期待される。

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