慶応大、非結晶分子・粒子の構造解析を大幅に効率化する手法を提案

慶應義塾大学、理化学研究所は共同で、将来のX線自由電子レーザー(XFEL)を利用して超分子複合体の構造を高効率で解析する方法の提案を行い、大規模計算機シミュレーションを通じて実用化の可能性を検討した。

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非晶質氷薄膜中に試料生体分子・粒子を高数密度で散布して埋め込む試料作製法を実験に採用すれば、X線照射率が100%となるため、十分な強度のX線を入射することで、前述の方法と比較して実験効率が高く、ノイズの少ない構造解析可能なデータを得ることが可能であると考えた。このアイデアが実用化可能であるかを調べるため、X線と物質内電子の相互作用を取り扱う電磁気学の基本に立ち返り、現状のX線検出器と現実的な試料作製条件等を考慮しながら、計算シミュレーションが行われた。その結果、これまでに提案されてきた液滴法に比べ、X線強度は10万分の1程度で済み、照射率は数千倍程度に向上、必要試料量は1千分の1程度となり大幅な効率化が図れることが分かった。

今回のシミュレーションは、XFELによる分子量百万を超える非結晶生体分子複合体の構造解析に向けて、今後の加速器やビームライン素子開発のマイルストーンを示したことになる。ここで提案した実験・解析方法の実用化には一定の目途が立っていることから、より強力なX線が供給されるようになれば、長年の夢であった非結晶粒子のナノメートル分解能を超えた構造解析が現実味を帯び、非結晶生体・材料粒子の構造研究を加速的に進展させる構造解析の革命につながることが期待できる。

さらに、今回のシミュレーションでは、リアルな試料系を原子レベルで再現することが不可欠であったため、膨大な計算を必要とし、約半年の計算が必要だった。今回の手順を基盤とすれば、今後は、スーパーコンピュータ「京」やそこから派生した計算機環境を用いることで、より詳細な実験計画立案やデータ解析が迅速に行える。そのため、この研究は、我が国が誇る国家基幹技術の機動的・戦略的連携を促進するひとつの方向性を示したものと言える。

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