理研、植物のリン欠乏ストレスを緩和する新しい糖脂質を発見

理化学研究所のグループディレクターの斉藤和季氏、研究員の岡咲洋三氏らの研究グループは、リンが不足した環境でも植物の生育を維持する糖脂質「グルクロン酸脂質」を発見し、その生合成に必須な「SQD2遺伝子」を同定した。

植物の生体膜は主にリンを含む脂質(リン脂質)と糖脂質で構成されているが、植物体内のリンが欠乏すると生体膜中のリン脂質が減少し、それを補うようにスルホ脂質などの糖脂質が増加して膜を維持し生育を助ける。こうした膜脂質の再構成は「膜脂質のリモデリング」と呼ばれ、リン欠乏環境下で植物が生存するために重要な役割を果たす。

研究グループは、独自開発した網羅的な脂質(脂質メタボローム)解析法により、リン欠乏環境下で生育したシロイヌナズナにおける膜脂質のリモデリングを調べ、一部の微生物でしか報告されておらず、植物では未知だった糖脂質「グルクロン酸脂質」が地上部に蓄積することを発見した。

このグルクロン酸脂質とスルホ脂質の構造が似ていたことから、スルホ脂質の生合成に関連する3つの遺伝子を欠損させた変異体を解析したところ、SQD2という遺伝子を欠損するとグルクロン酸脂質が全く蓄積されず、リン欠乏環境下では通常より早く枯死することを見いだした。また、グルクロン酸脂質はイネにも含まれ、リン欠乏環境下では約6倍も蓄積量が増加したことから、この脂質は植物に広く存在し、リン欠乏ストレスの緩和に役立つ新規の脂質である可能性を示した。

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