阪大と東北大,p型シリコン中の室温スピン輸送を世界で初めて達成

大阪大学大学院基礎工学研究科システム創成専攻電子光科学領域特任准教授の仕幸英治氏,同博士前期課程2年生の久保和樹氏,同教授の白石誠司らは,東北大学金属材料研究所教授の齊藤英治氏,同助教の安藤和也氏と共同で,動力学的スピン注入法であるスピンポンピングを用いて,p型シリコン中の室温スピン輸送を世界で初めて達成した。

今回研究グループは,1×1019 cm-3程度の不純物ドーピングを行なったp型シリコン上にNi-Fe合金薄膜(磁性体)を形成し,強磁性共鳴を用いたスピンポンピングという動力学的手法により,Ni-Fe合金からp型シリコンの内部に純スピン流を生成さた。

そして生成された純スピン流を,同一シリコン上でNi-Fe合金から離して形成したパラジウム(Pd)金属薄膜に吸収させ,そのPdにおける逆スピンホール効果による起電力として検出することにより,p型シリコン中を純スピン流が輸送されたことを世界で初めて実証した。

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これによりn型,p型のシリコンに室温でスピン情報を伝播させる基礎技術が確立したことになり,シリコンを用いたスピントロニクス領域の大きな発展が期待できる成果。環境親和性と既存の半導体産業のもつインフラとの親和性のよい,シリコンにスピン機能を搭載した超低消費電力論理素子実現への重要な一歩となるもの。

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